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画像ファイル ドイツ語
ドイツ駐在員始末記
1いざドイツへ
2デュッセルドルフ
3駐在員の面々
4アパートを探せ
5女房と子供が来た
6ドイツ人の奥さん
7御入園
8ドイツ人秘書
9アパート事情
10虱騒動
11アウトバーンと車
12ドイツ語
13バカンス
14自転車騒動
15買い物
16食事と食材
17鍵が無い!
18娯楽と本

トラベルはトラブル
1不思議の国インド
2ローマ タクシー...
3モデナで道を...
4デリゲート入門
5...イギリス人
6片桐機長何を...
7ブルーカラー
8横メシ1
9横メシ2


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狂った言語
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『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』(Eine kleine Nachtmusik) ご存知のモーツアルト「小夜曲」である。
美しい題名である、おそらく日本人がそのまま発音しても、ドイツ人に伝わる。
しかし侮ってはいけない、ドイツ語は狂った言語なのだ。
先ず「Eine kleine Nachtmusik」を英語の訳すと、「a little night musick」となる Eineは不定冠詞Einの女性形であり、kleineは小さなと言う意味の形容詞klineの女性形、 Nachtmusikは合成名詞でNacht(夜)+Musik(曲)が合体したものである。
ドイツ語の名詞は単数の時、男性、女性、中性の3っの性に区別される。
そしてその性によって定冠詞、不定冠詞、形容詞が変化する。
その単語がどの性に属するかは、例えば「父」の場合は男性、「母」の場合は女性に 属す。
通常ペアで男性、女性の区別の在るものは殆どそのまま、男性名詞、女性名詞となる。
しかしペアが無いもの、すなわち殆どの名詞がどの性に属するかの規則性は無いのである。
例えば一般的な車をあらわす「Wagen」は女性名詞で定冠詞をつけると 「der Wagen」となり、derは英語のtheにあたる。
しかしながら、自動車をあらわす 「Auto」は中性で「das Auto」となるのだ。
規則性が無いと言うことは、言い換えると全て覚えこまなければならないと言うことで、ドイツ語を 習う人は、単語と共にその性も覚えると言う面倒なことを背負い込む。
同じ性がある言語のロシア語では、これはおそらく女性名詞であろうと思われる物は、 案の定女性名詞で迷うものは中性名詞である。

数字の読み方
もう一つドイツ語で面倒なことがある、数字の読み方だ。
ドイツ語では、25は5と20と言う順番で言う。
「フュンフ ウント ツバンティッヒ」 フュンフは5、ウントはand、ツバンティッヒは20である。
つまり1の位を先に言うのである。
常に小さいほうから言うのかと思うとそうではなく、125は「アイン フンドレッド フュンフ ウント ツバンティッヒ」 と言うのである。
100と5と20と言う順番である。
つまり最後の十の位と一の位を引っくり返して言うのである。
スーパーの買い物などは、レジで数字で出るので支払いの時に戸惑うことは先ず無いのだが、 駐車料金を払う時に、早口で言われると頭の中が混乱する、この様な時は小銭は出さず、 必ずおつりが来る大きな札を出す、やがてポケットが小銭でいっぱいになることを知りながら。
まあこちらの方は2ヶ月もすれば慣れるのであるが、名詞の性に関する問題はそうは行かない。

ドイツ語のお勉強
日本では、ドイツ人は殆ど英語が話せると思っていたが、実際に行ってみると、ドイツ人の 殆どが英語を話せないことに気づき驚く。
たとえ医者であっても英語を話せない人も居り、一生懸命病状を説明してもわかってもらえない ことに腹を立てた私が、横で通訳していた秘書に、ドイツの医者はカルテを書く外国語に いったい何を習うんだと聞いたところ「ラテン」という答えが返ってきた。
日本人の医者はセッセとドイツ語でカルテをで書き、本場ドイツの医者はラテン語で書くのである。
ドイツに赴任当時私は、毎週2回家庭教師を頼んでドイツ語を教えてもらっていた。
しかしながら、この授業もしだいに仕事が忙しくなり、授業のキャンセルが増えたことを理由に断ってしまった。
この家庭教師は30才位の美人の学校の先生であったが、ある時100のことを英語でフンドレッドと 言ったので私がハンドレッドだと直すと、そんなことは無い、100は英語でも絶対にフンドレッド だと言い張り、譲ろうとしなかった。
こちらが正しいと知っていても、絶対ドイツ人と議論をしてはいけないと言う教えを思い出した。
ドイツ語を覚えないで、私は代わりにそのことを身をもって勉強した。
このフンドレッドであるがドイツ人やスイス人でかなり英語の堪能な人でもフンドレッドと言ていた。
家庭教師を断る代わりに、私は公共のドイツに住む外国人の為のドイツ語学校に 毎週金曜日に通うようになる。
しかしながら、こちらはこちらで、この教室に通ってくるのが、私ともう一人フィリピンの女性だけで、 しかもこの女性は全く英語を話さなかった為に、教師の方も文法などは説明せずに ただ本を読む授業が続き、私の方も何を教わっているのかわからなくなってしまったことと、 やはり仕事が忙しくて、休む回数が増えたので、4、5回授業に出ただけで止めてしまった。
今考えるともう少し熱心に勉強をしておけば良かったと後悔をしている。
デュッセルドルフには当時6000人の日本人が住んでいると言われたが、もともと永住を決めた人を 除いて、ある程度まともなドイツ語を話す人は私が知る限り、皆無といってよかった。

子供とドイツ語
そのような訳で私のドイツ語は3年間の間殆ど上達することは無かった。
日常生活はドイツ語無しで済ませ、ドイツ語が必要な時は、秘書を連れて行って、通訳を してもらった。
しかしながら子供は違う、定冠詞がどうのこうのとか、形容詞の変化がどうなるなどと言うことは一切関係なく 言葉を、耳から入って来たまま覚えてしまう。
幼稚園の先生はドイツ語で怒るので、それを解せなかったら、子供でも難儀なことになるわけだ。
私の娘は、家では絶対にドイツ語を話さなかった、多分照れくさかったのだ。
その為、私も女房も、娘はドイツ語が全くわからないと思っていたのであるが、 ある時ドイツ人の子供と遊んでいて、娘が大声でドイツ語を叫んでいたのには驚いた。
4〜5才の子供の手を引いた日本人の奥さんが電車に乗って、 周りのドイツ人から何か話しかけられ、あわてて子供に「このおじさんなんていってるの?」と聞く、 子供は「おじさんはね、どこから来たか聞いてるのよ。」などと答えているのを良く見かける。
我が家でも娘を連れて買い物に行こうとした時、アパートの入り口で隣に住むアウスバッサーの奥さんに出会い、 奥さんが娘に向かって、「アイン カウヘン?」(お買い物?)と聞いたことがある、娘は少し恥ずかしそうに、にっこり笑って 「ヤア」と答えた。
何を聞かれているか完全に理解しているのである。
奥さんも承知したもので、間違っても私や女房にはドイツ語で話しかけない。

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