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画像ファイル バカンス
ドイツ駐在員始末記
1いざドイツへ
2デュッセルドルフ
3駐在員の面々
4アパートを探せ
5女房と子供が来た
6ドイツ人の奥さん
7御入園
8ドイツ人秘書
9アパート事情
10虱騒動
11アウトバーンと車
12ドイツ語
13バカンス
14自転車騒動
15買い物
16食事と食材
17鍵が無い!
18娯楽と本

トラベルはトラブル
1不思議の国インド
2ローマ タクシー...
3モデナで道を...
4デリゲート入門
5...イギリス人
6片桐機長何を...
7ブルーカラー
8横メシ1
9横メシ2


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マジョルカ島
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青い空。
まぶしい太陽。
ホテルの窓に広がる地中海。
ここはスペインのマジョルカ島だ!
ついに来た、来た、バカンスに!。
マジョルカ島は、ショパンがジョルジュサントと暮らして、名曲「雨だれのワルツ」を作曲した地である。
そしてここはスペイ有数の保養地であり、ドイツ人が最も好むバカンスの地でもある。
毎年6月ともなるとドイツ人はそわそわと落ち着かなくなる、バカンスの季節が近いのだ。
ドイツ人のバカンス好きはもう異常である、これだけの為に、バカンスだけの為に、一年働いていると言っても良いくらいだ。
そして大抵7月頃に2週間程休みを取ってバカンスに出かけるのである。
入社以来3日以上の休みを取った事もなく、ましてやバカンスなどと考えたことも無い私には想像の出来ない世界だ。
郷に入れば郷に従え、皆で渡れば怖くない。
日本の本社には内緒で、旅行会社の女の子に「たった5日でいいのですか?」等と言われながら、 4ヶ月も前から、最も短いコースを予約して、子供が病気になったらどうしようとか、 はた又急な仕事が飛び込みませんようにとか、取り越し苦労と、心配に心配を重ねて、 ひたすら出張予定を調整し、万難を廃してついに来たのである。
そもそもきっかけは我が女房が近所の日本人の奥さんと「今年はバカンスに行きましょうね。」と約束したことから始まる。
私といえば毎日、今日はロンドン明日はパリ、明後日はイタリアのナポリとヨーロッパを駆け巡っており、 「バカンスに行くより家で寝ていたい」これが本音、しかも私は大の観光地嫌いである。
ただし女房の方は、徹底抗戦の構えで、今回に限っては頑強である。
毎日ヾ娘を幼稚園に送って行って、又迎えに行く、せいぜいあっても娘の友達の 誕生パーティ程度、ドイツからどこか他の国に行って見たいと思っている。
「この前ロマンチック街道に行ったではないか。」とか「オランダのキューケンホッフにチューリップを見に行ったよな。」 等と言っても、「日帰りでしょ。」と一言であしらわれる。
ついに根負けし、私も折れて、どうせ4ヶ月も先のことだからと適当に予約を入れてしまったのだ。

マジョルカ島は地中海に有るのだ
デュッセルドルフの空港から、重量制限ぎりぎりの荷物を持ったドイツ人で満杯のジャンボ機はこのまま 滑走路の向こうに、落ちるのではないかと思われる程のろのろと離陸して、一路マジョルカ島へと飛び立ったのである。
バカンス客は陽気である、まるでこの世の中から辛い悲しいことが一切消えてなくなったかのように、 飲んで、浮かれて、騒いでいる。
飛行機が無事空港の滑走路に着くと一斉に乗客が拍手するのも、バカンスの慣わしである。
機長天晴れ、ナイスランディングと言うのがこの拍手の意味である。
時には「ドスン」とどう見てもナイスランディングと思われない着地でも、思い切って拍手するのが、バカンスの ご祝儀相場なのだ。
当然のことに通関の手続き等は無く、簡単なパスポートチェックだけ、空港を出るとホテルのバスが待っている。
バスに乗る前に、大きい水差しの様な物を持ったお兄さんが、「口をあけて上を向けと」言う、上を向くと開けた口に ワインを注いでくれる。
なかなかのサービスと思いきや、これがちょっとしたトリックで、口を開けてワインを飲む時に、ポラロイドカメラで どこからか撮影をする、そして後ほどホテルにこの写真を張り出して販売するのである。
けちな、失礼!、倹約家のドイツ人でもこの時ばかりは財布の紐が緩むのであろうか。
ホテルは一流である、窓から地中海が見られるし、歩いて地中海まで行くことも出来る。
ホテルの部屋は冷房が良く効いていて、時々ヤモリが壁に張り付いていることを除けば言うことは無い。
そもそも私は自慢ではないが、リゾートホテルなどと言うものに泊まった経験が無いので、 このホテルが一流か否か等と言うことはわからないのだが。
このマジョルカ島は観光地はあまり無い、まあ島そのものが観光地なのだが。
2日目に、バスで修道院みたいな所やお土産を売っている所を半日ほど観光した。
大体ドイツ人はバカンス中にあまり観光などせず、プールサイドでゆっくりと椅子に腰掛けて のんびりと過ごすことを好む、これはちょっと日本人には物足りないのであるが。
このホテルに滞在する人の殆どが、昼間はホテルのプールで泳いだり、プールサイドに置かれた 椅子に腰掛けてのんびり過ごす。

ドイツ人気質
「せっかく地中海に来たのだから、地中海で泳ぐぞ」と山育ちの私は張り切った。
ホテルから地中海まで歩いて5分位である。
300円位の入場料を払って、岩場のようなところから勇んで海に飛び込んだ。
と、その海水の冷たいこと、冷たいこと、しばらく我慢して泳いでいたが体が痺れてきそうなので 2分位で出てしまった、確かに殆ど誰も泳いで居ない。
皆がプールで泳いでいる訳がわかった、それでも経験は経験である、私はあの地中海で泳いだのである。
ところで300円の入場料を払っている時に面白いことがあった。
ドイツ人の老夫婦が私たちの家族の所に来て、「ホテルのフロントに行けば、ここのただの入場券 をくれるから、今度からそれをもらって来れば、ビールが一杯くらい飲めよ」と教えてくれた。
まさにこれがドイツ人である、私はうれしくなった。
彼らにとっては、知らない外国人が、目の前で300円を損しようとしている、これを教えてやるのは自分たちの 義務であると思っている、義務に弱いのがドイツ人である。
次に金額であるが、私なら、たかだか3人で300円であり、しかもお金を使う為に来たようなバカンスだ。
しかしドイツ人は倹約家であり無駄な金はたとえ10円でも我慢できないのである。
更に「それだけあれば、ビールが一杯飲める」と言った、限りなくビール好きである。
其の上、この夫婦、海岸に来るのにハエ取のスプレーを持ってきており、時々寄ってくるハエに スプレーをしていた、徹底的な綺麗好きである、パーフェクトなドイツ人夫婦であった。

スペインの食事
さてホテルの食事であるが、朝食はバイキングである、なんといってもここはスペイン、 料理が日本人の口に合わないはずが無い。
何を食べても美味しい、オレンジジュースひとつとってもドイツとは大違いである。
昼食もバイキング形式であるが、朝食とは一味違う、ナスを焼いてオリーブオイルに漬けたのは 本当に美味しく、日本人の口に良く合う。
冷たい野菜のスープ、ガスパチョ、どうしたらただの野菜があんなに美味しくなるのだろうか。
何気なく出ている生ハムもすばらしい、ドイツにも数え切れない程のハムがあるが、 こんなの美味しいのはドイツ中どこを探してもお目にかかれない。
夜の肉料理も豪華である、昼間さんざん泳いで、お腹がすいていることを差し引いても、 久々に味わう美味だ、羊の肉ってこんなに美味しかったっけ。

アトラクション
ホテルに滞在して3日目の夕食後、このホテル恒例の美人コンテストが行われた。
滞在している女性の中から参加者を募集して、優勝者を決めるのだ。
審査員は、5人程席の番号からくじ引きで選出されたが、最後の一人の時、司会者が、 珍しい日本人のお客さんが居ますと突然私を紹介してくれた、私が立ち上がると、会場からは 割れんばかり拍手が、さすがにこんな所にバカンスに来る日本人は珍しいのである。
最後にコンテストの優勝者が決まり、私が代表して花束を渡した、これもお決まりであるが、 優勝者が私のほほにキスをしてくれた。
ビバ!バカンス! もう帰りたくない。

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